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『無職のポケモン廃人』ポケモンエアプに嘲笑される【短編小説】

みなさん、こんにちは。洋之介です。

今回は、短編の小説を書いたのでそれをブログにのせます。

興味をもった方は、読んでくださると嬉しいです。

 

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本編

 
『無職のポケモン廃人』
 ポケモンエアプに嘲笑される
 
 2023年11月2日(木)午後9時。
 無職のポケモン廃人は、電車の中でポケモンをしていた。
 
 細い体躯に銀縁の丸メガネ。
 黒のフード付きジャージを身につけ、
 マスクとイヤホンを装着。
 
 夜になり人が空き始めた電車内。
 電車の席に座り、無職のポケモン廃人は今日もポケモンに没頭する。 
 
「あの……もしかしてそれって、
 ポケモンしちゃってる感じですか?」
 
 ポケモン廃人は、隣に座った人物に話かけられた。
 
 この間も子どもに話かけられたな、
 そんなことを思いながらイヤホンを取り隣を見ると、
 そこにいたのは、年齢が20代中盤から後半あたりと思わしき男だった。 
 
 その男はスーツ姿でスポーツ刈り。
 目はクレープの生地のように細く、顔は僅かに光沢を帯びており、
 ネクタイは緩められている。
 
 どうやら、仕事帰りのサラリーマンのようだ。
 
「そうですね。ポケモンです」
 
「あ……マジすか。実は僕もポケモン好きでして。
 今は何をしてるんです?」 
 
「育成です」
 
「育成!? ということは……
 オンライン対戦とかもしちゃってる感じ?」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、眉毛を上下させながらそう言った。
 
「そうですね」
 
「ちょっとボックス見せてよ」
 
ポケモン廃人は、いきなりタメ口になった
スポーツ刈りのサラリーマンに動揺しつつも、
ポケモンのボックスを見せた。 
 
「ふーん、すごいね。たくさんポケモンがいて」
 ポケモン廃人のボックスは、育成したポケモン
 タイプごとに分けられて格納されている。
 例えば炎タイプならAのボックス、
 水タイプならBのボックスというような感じだ。
 ちなみに一つのボックスにはポケモンを30体収容することができ、
 ポケットモンスタースカレット・バイオレットでは
 ボックスが最大32個になる。
 つまり、960体のポケモンを入れられる計算だ。 
 
 
「あ、でもこれはダメだなー。
 攻撃が最高になってないから、育成し直した方がいいよ」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、
 ハバタクカミの画面を見せてそう言った。
 
「いえ、攻撃の個体値をマックスにしていないのはわざとです。
 ハバタクカミには特殊技しか覚えさせていないため、
 攻撃の個体値をマックスにする必要がありません」 
 
 ポケモンには、HP、攻撃、防御、特攻、特防、素早さ、
 という6つのステータスがある。
 その中で相手を攻撃する技の威力を上げるステータスは2つあり、
 ”攻撃”と”特攻"である。
 “攻撃"は物理攻撃を使用する場合に参照するステータスで、
 ”特攻"は特殊攻撃を使用する場合に参照するステータスである。
 ハバタクカミは、特攻のステータスが高く、
 一般的に特殊技しか採用しない。
 そのため、攻撃のステータスは上げる必要がない、
 というのがポケモン廃人の意見である。 
 
「え? でも、どうせなら、
 攻撃も上げておいた方がいいと思うけどね〜。
 減るもんじゃないし……」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、やれやれといった感じで、
 肩をすくめながらそう言った。 
 
「いえ、不必要な攻撃の個体値を上げておくとデメリットが生じます。
 例えば”イカサマ”や”混乱状態による自傷”の場合です。
 “イカサマ”という技は攻撃するポケモン
 ”攻撃”のステータスを参照するのではなく、
 攻撃相手の”攻撃”のステータスを参照する特殊な技です。
 不必要に攻撃の個体値を上げておくと、ハバタクカミが
 相手の”イカサマ"から受けるダメージが増えてしまいます。
 "混乱による自傷”も同様です。不必要な攻撃個体値を上げておくと、
 自傷のダメージが増加してしまいます」 
 
 ポケモンによる”こんらん"とは、状態異常の一種である。
  “こんらん”状態になると、3分の1の確率がポケモンが行動できなくなり、
 更に自傷した分のダメージを受けることとなる。
 自傷ダメージは、そのポケモンの”攻撃”ステータスを参照して行われるため、
 攻撃のステータスが高いほど自傷ダメージも増えてしまう。
 
「え? そんなの気にする必要ないと思うけどね……。
 攻撃種族値をマックスにしておけば、
 いざ物理技を覚えさせるときに役立つし」
 
種族値ではなく、個体値です。
 それに、仮に物理技を覚えさせるとしたら、
 私は同じポケモンを別で用意して攻撃個体値マックスにし、
 育成します」
 
 ポケモンには”三値"という値が存在し、”個体値”、”種族値”、”努力値”のことである。
 
 “個体値”は、才能のような値で、0〜31の32段階に分けられる。
 “個体値”が31に近づけば近づくほど、
 才能がある個体なので、ステータスも高くなる。
 
 “種族値”とは、ポケモンの種類ごとに与えられる値である。
 例えば、レジエレキというポケモンは素早さの種族値が200でとても高い。
 そのため、他の種類のポケモンと比較して、素早さのステータスが
 高くなりやすい傾向にある。
 逆にヤドンというポケモンは、素早さ種族値が15しかない。
 そのため、他の種類のポケモンと比較して、素早さのステータスが
 低くなりやすい傾向にある。
 “種族値”は、同じ種類のポケモンで同一である。
 
 ちなみに”努力値”は、才能や種族に関係なく
 ポケモンの後天的な努力によって、
 ポケモンのステータスを伸ばすことができる値のことである。 
 努力値は、1匹のポケモンに合計で510まで割り振ることができ、
 一つのステータスに振ることができる上限は252である。
 同じポケモンでも、攻撃に多く努力値を振れば攻撃のステータスが大きくなり、
 防御に大きく振れば防御のステータスが大きくなる。
 この510の努力値をどのような配分で振るかを試行錯誤し、
 考えることがポケモン対戦の面白さの一つである。
 
「……」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、不機嫌そうに口をつぐんだ。
 
 正論を言われ不機嫌なスポーツ刈りのサラリーマンは、
 どこか粗はないか、どこかマウントを取れる場所はないか、
 と必死にポケモン廃人のボックスを物色する。
 
「……あのさ、こんなにカイリュー育成して、なんか意味ある?
 今は、スケイルショット型一択でしょ」
スポーツ刈りのサラリーマンは、嘲笑しながらそう言った。
 
「確かにスケイルショット型は強いですが、
 カイリューの強い型の一つにすぎません。
 ポケモンのパーティや対戦環境によって、
 強力な型を使えることがカイリューの強みです。
 一つの型に固執する必要がありません」
 
 カイリューは、いわゆる”600族”と呼ばれる種族値の合計が600なポケモンで、
 非常にステータスが高いポケモンだ。
 そのため、できることが多く、努力値の振り方、覚えさせる技、
 持たせる持ち物によって、多数の型が存在する。
 型が多いと対応しなければいけない範囲が広くなるため、
 型の多さはポケモンの強さの一つの指標となる。
 ちなみに、カイリューは200種類存在すると言われるくらい型が多く、
 現在の対戦環境で一番型が多いポケモンなのではないかと思われる。
 
「失礼ですが、あなたはどれくらいポケモンをプレイしているのでしょうか?
 発言の節々に、ポケモン対戦に対する浅はかさを感じます」
 ポケモン廃人は、苛立ちを匂わせた声音でそう言った。
 
「え? いや、社会人になってから忙しくてさ、
 1秒もやったことないんだよね。スカーレットバイオレット。
 でも、実況動画はよく見るから、知識はあるよ」
 
「浅はかな知識で事を語ることは、その事に対して、
 更にはその事を好きな人に対しての侮辱です。
 今後は、そのような知ったかぶりの発言を改めていただきたい」
 
「……はいはい。わかりましたよ」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、不貞腐れながらそう言った。
 
「じゃあ、ここで僕は降りるので」
 スポーツ刈りのサラリーマンは、電車から下車した。
 
 
 人はなぜエアプ行為をするのか、
 なぜ俺はポケモンエアプに対して苛立ちを感じるのか。
 ポケモンに対する魅力を大して理解しないで、知ったように口を利く。
 間違った発言をされることで、ポケモンの価値を落とされていると思う。
 
 …………。
 
 「俺は、やっぱりポケモンが好きなんだな」ポケモン廃人はそう思った。

終わりに

『無職のポケモン廃人』シリーズの小説を書きました。

この話を書いてる途中で筆が全く進まなくなることがあって、書き切るのが大変でした。自分で話を書いていると、突然、「この話って何が面白いんだろう?」と思う時があります。自分で書いた話を客観的に読むのってすごく難しいことだなと思います。

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